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2019.3.9
今年もいつものように春がやってきます。四季が美しい日本では、花の季節の始まりです。
甘夏ミカンの花が咲くのは、桜やチューリップの花が散って、日中は少し汗ばむくらいになる初夏のころ。九州の遠浅の不知火海に面した丘に広がるミカン畑は、芳醇で濃厚なネロリの香りに包まれます。
固い果皮で甘酸っぱい夏ミカンより、皮がむきやすく甘いミカンが好まれる昨今は、ミカン畑にも甘夏ミカンだけでなく、デコポンや伊予柑、晩柑といった甘い実をつける柑橘類が育っています。それらの花も甘夏ミカンの花と一緒に開花時期を迎えます。
私たちはネロリの香りをつくるために、色々な柑橘類が植えられているそのミカン畑に入って、甘夏ミカンの花を摘むのですが、花を間違えることは決してありません。
その理由は、「香り」にあります。
ビターオレンジであるダイダイが日本の土壌で突然変異した夏ミカンの花は、ネロリの特徴である濃厚な香りがビターオレンジよりさらに強く、この香りの強さこそが、樹木としての夏ミカンの強さでもあります。農薬や化学肥料不要の夏ミカンの木は、その強さから、現在国内で栽培される多くの柑橘類の台木としてもよく用いられています。
一方、いろいろな柑橘類を人工交配させて甘さを増した新しいミカンは、自分で病気を防ぐための芳香成分「香り」を作り出す力が弱いためか、病気に弱く農薬や化学肥料が必要となることが多いようです。そのため、花も香りが弱く、どんなに形状が似ていても、甘夏ミカンの花と間違えて摘むことはないのです。
「香り」を通じて、自然栽培やオーガニック栽培の意味と大切さを学ぶことができるのです。