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2019.5.3
柔らかに差し込む春の朝日受けて、その光を待っていたようにふくらんだつぼみが開き始めます。
「おはよう!おはよう!」
ジャパニーズネロリの原料となる甘夏ミカンの花摘み作業の一日は、開き始めた花たちとの朝のあいさつで始まります。
九州は熊本県の芦北水俣地域で全生産量の90%以上が栽培される甘夏みかんは、その名のとおり初夏まで美味しく食べられる晩柑類で、海外でビターオレンジと呼ばれる橙(ダイダイ)が日本で突然変異した日本原産の柑橘類です。
そのため、4月下旬から5月上旬に咲くその花は、甘さを増すために人工交配された他のミカンの花より強い香りが特徴です。
「私はここよ。ここにいるから見つけてちょうだい。」というように、開き始めた花は強い香りを放ちます。
太陽に向けるとたくさんの油包が透けて見え、断面からも強いネロリの香りを放つ肉厚なその花びらは、日中は30℃近くにまで上がる南九州の初夏の日差しの中でも香りを失うことがなく、気温が上がるにしたがって次々に新しい花が開きます。
太陽が高くなる昼間は、強い日射しを避けて常緑広葉樹である甘夏の濃い緑の葉陰に入り、下向きに咲く星のような花々と話をしながら過ごします。
でも、昼間のオーガニック栽培甘夏みかん畑は、ニホンミツバチの牧場のよう。それぞれはかすかな羽音でも、葉陰の音楽ホールはニホンミツバチの大合唱が響きます。
私たちはそこに少しお邪魔して、ミツバチを集めるための花の芳醇な香りを、人の健康と生活のために利用させてもらうのです。
春の肌寒さがもどる夕暮れが迫ると、夕やみにかくれた甘夏みかん畑からは、ジャスミンや月下香を思わせる濃厚な香りが辺りに漂います。
この貴重な幸せの香りを多くの人に伝えたい。オーガニック生産者との共同作業は続きます。